『裸の島』
1960 | 監督:新藤兼人| モノクロ | 96’| セリフなし
中年の男にホテルに連れ込まれそうになった真琴は、大学生の清に助けられた。その後ふたりはお互いをいたぶるかのように遊び、身体を重ねていく。清は人妻と不倫していたが、真琴のことが忘れられず、やがてふたりは同棲をはじめ、美人局で金を稼ぐようになる。しかし、まもなくして真琴が妊娠していることが発覚。子どもを堕ろせという清に反発し、真琴はアパートを出ていくが……。刑務所帰りの男は花札賭場で出自不明の女に出会い、高額の賭場への紹介を依頼される。森英恵によるスタイリッシュな衣装に身を包んだ加賀まりこが、賭場でひときわ異彩を放つ。明朗喜劇の印象が強い松竹にあって、篠田正浩は闇と光の強烈なコントラストで裏社会の男女を描き、公開が延期されお蔵入りも危惧されたほどの異色作となった。本作に魅了されたF・コッポラやM・スコセッシが、鑑賞用にフィルムを購入したことでも有名。人間と自然の格闘を詩情豊かに描く、新藤の有名作。孤島に住む中年夫婦と幼い兄弟の家族は、日々、痩せた土地を耕し、舟で水を汲みに行き、急斜面を登って運ぶ。しかし、貧しい生活の中、長男が急病に罹る。登場人物は限られ台詞も殆ど排された野心的な作品だが、力強い映像と音響はかえって感動を招き、第2回モスクワ国際映画祭でグランプリを獲得した。驚くことに製作スタッフは僅か13人、近代映画協会の自主配給で公開された。
(執筆:星 遼太朗)
開催日時
(1) 11/28/2025(金) 19:20*アフタートークあり(広東語)
(2) 12/5/2025(金) 19:50
激情の果実-日本ヌーヴェルヴァーグ傑作選
「日本ヌーヴェルヴァーグ」の出現は、1960年代の日本映画産業の変革を象徴するものであった。大手映画会社の減産、インディーズ映画の台頭、そして芸術的により過激な作品が自主制作・配給によって世に出るようになり、テーマから形式に足るまで日本映画は解放されより豊かで多様な表現が現れた。中平康監督の『狂った果実』(1956年)や増村保造監督の『くちづけ』(1957年)は、すでに変革の兆しを予感させる作品であったが、真に映画界に衝撃を与え、新世代の波を巻き起こしたのは、1960年に公開された『青春残酷物語』である。先行きが不透明で善悪の価値観が混迷する現代において、映画がいかに知性と勇気をもって逆境に立ち向かい混沌の中から新たな地平を切り拓いてきたかを今こそ改めて振り返るべき時なのかもしれない。
キュレーター 馮慶強
チケット価格
スタンダード: HK$95, MCL MAX メンバー: HK$85, 子供 / 学生 / シニア: HK$75
チケット購入
https://www.mclcinema.com/Festival.aspx?visLang=2&id=1118
お問合せ
在香港日本国総領事館 広報文化部
電話:2522 1184
E-mail: infojp@hn.mofa.go.jp